現代の日本人は主に洋装で生活し、着物は晴れなどの冠婚葬祭のみに身に着ける特別な装いとなりました。しかし、着物は保管につけて定期的にメンテナンスが必要であり、しまいっぱなしにしていると虫食いやカビ、色褪せなどが起こることがあります。古くなった着物はどうすればよいのでしょうか?
成人式に身に着けた振袖のゆくえ
成人式は人生における転機であり、特別な晴れの日です。成人式ではその日にふさわしい格の民族衣装である振袖に袖を通し、晴れの日を祝う文化があります。こうした装いの文化は今も昔も変わらず、脈々と先祖代々から引き継がれています。
しかし、振袖は大変高額であるにもかかわらず、成人式を過ぎるとほとんど身に着けられることがありません。成人式後、友人の結婚式の参列に数回程度袖を通す程度で、その後多くの家庭ではタンスの肥やしになってしまうのがほとんどなのです。
古くなった振袖をどうするべきか
振袖は高級車一台分程度の費用がかかるともいわれており、それを成人式以降に袖を通さずに長年タンスに眠らせておくことは非常にもったいないことといえます。また日常生活上でそれほど着物に対して注視することがなくなり、タンスの中に眠っている着物に対して手入れをせずに何十年と放置していることも珍しくありません。
これではせっかくの振袖も何の価値も意味もなくなってしまいます。いざタンスを開けて身に着けようと思っても、振袖を着るのに適した時期を過ぎてしまえば、振袖に袖を通せなくなっているのです。こうした行き場のない着物をどうするべきかは多くの家庭で抱えている問題といえるでしょう。
こうした場合は、着物のリフォームを考えてみるのも一つの方法です。袖を留め袖程度の丈に裁断して仕立て直しし、中年以降でも身に着けることができる場合もあります。しかしあまりに派手な柄や鮮やかすぎる色目であると、袖丈を裁断して留め袖や訪問着として仕立てても、年齢相応ではなく身に着けられないことも多々あります。こうした場合には呉服の買い取り業者を頼って売るのもよいといえるでしょう。
現代の着物の買取の実態について
インターネットのサイトでは数多くの着物の買い取り業者が存在します。着物はかさばり、重量があるので持ち運びも難しいので、自宅に業者が直接査定に来て、その場で査定買取してくれるサービスもあります。また自宅に業者が来られるのは困るという方には、オンラインで直接業者とリモートで査定してもらう方法や、業者に直接宅配便で着物を送って査定してもらい、後日査定額を銀行振込してもらう方法もあります。
50、60年前の古典柄でそんな古い振袖が売れるのかと心配される人も多いですが、かえってそれが一点物の価値を生み、高額で査定されることもあります。より高額査定で買い取ってもらいたい場合は、日ごろのお手入れも必要になります。しみや汚れ、カビなどがあると査定額は減額されていきますので、一年に最低でも一度ぐらいは風通しのよい日陰干しを心掛けたり、湿気をためない桐のタンスで保管したり、汚れやシミがある場合は専門業者に洗いにだしておくことが大事です。
買い取り業者とレンタル業者が提携していて、古くて行き場のなかった着物が今の多くの若い成人女性に再び気に入ってもらい、袖を通してもらえ現代で再び見事によみがえることもあります。
日本では成人式に誂えてもらった振袖を成人式に身に着ける文化が脈々と受け継がれていますが、成人式以降袖を通されず箪笥に眠り、忘れ去られてしまっているのは悲しい現実です。しかし古い着物は、大量生産ではみることのできない絢爛豪華で素晴らしい匠の技と伝統をそこに見ることができます。古い振袖はリフォームして再び身に着けたり、買い取り業者やレンタル業者のプロの手を借りて、リサイクルしてその伝統美を後世に受け継いでいくことが大事なのではないでしょうか。