振袖は、一般的には「未婚女性の第一礼装」と認識されています。では成人を迎える前に既婚者となった女性は自身の成人式で振袖を着てはいけないのでしょうか。近年晩婚化の時代といわれていますが、もちろん中には早婚の方もいます。結婚していたら振袖を着てはいけないというのが事実であれば困る方もいるでしょう。早速解説していきます。
既婚者は振袖を着られない？
既婚者が振袖を着てもよいのかどうか、その答えは一律ではありません。ですが、既婚者の振袖姿には多くの人が違和感を覚えることは事実です。江戸時代の世の中では、着物の袖の振り方で求愛に対する意思表示の意味を成すといわれていました。女性が自分の意見をはっきり主張するのが、まだ難しかった時代です。
着物の袖をゆっくり振ればこちらも気がある、反対に手早く振ればこちらに気はないといったように、着物の袖は気持ちを示すツールとして使われていました。そのため、すでに結婚していれば求愛に対して答えること自体おかしいということになります。このような理由から振袖は未婚女性の着物と認識されるようになったのです。つまり、よりその時代に近い年配の方にとっては、既婚者の振袖姿はタブーなのでしょう。
一方で現代の考え方としては、振袖は華やかで柄が豊富であるなど、おしゃれ事情をメインにとらえた理由で振袖を好む人もいます。既婚者が振袖を着ることが必ずしも禁止されているわけではありませんので、振袖で出向く場における周囲の反応に合わせるのがもっとも無難でしょう。
既婚者に相応しい着物
実は、既婚者のみが着られる着物が存在するのはご存知ですか？それは、袖を短く留め、紋付きで無地のちりめん生地を使用した黒留袖と呼ばれる着物です。もっとも格式の高い礼服であり、着用できるのは既婚者に限定されています。黒留袖に続いて位の高い色留袖という着物もありますが、こちらは成人後の女性であれば着用できるものなので、とくに既婚未婚は問いません。
また、使いやすい着物を望む声から生まれた訪問着や、和を感じさせる習い事に適している白無地なども、既婚者に相応しい着物です。迷った場合は、身分や場に左右されない訪問着がおすすめでしょう。趣味の観劇やお子さまの七五三など幅広いシーンで着用できる訪問着は、やわらかな色合いが多く、着回し力も抜群です。
成人式なら既婚者でも振袖を着てもよい
前述のとおり「未婚者の着物」というイメージが強い振袖ですが、同時に、「成人する女性の晴れ着」としての認知もあります。そのため成人式に振袖を着ることは、今や日本の文化のひとつになっているといっても過言ではないでしょう。そちらの解釈をメインにとらえるならば、既婚や未婚、さらにはお子さまの有無などは関係ありません。どんな女性でも成人式には振袖を着ても大丈夫なので安心してください。
むしろ、結婚していたら成人式に振袖を着てはいけないなどというルールがあれば、それこそ今の時代では差別になりかねません。成人式で振袖を着ることは、日本女性の特権ともいえます。お気に入りの振袖で、一生に一度きりの日をぜひ楽しんでください。
まとめ
歴史をさかのぼれば、振袖は、江戸時代の初期までは男性も女性も着ていた着物でした。ということは、そもそも既婚も未婚も関係なかったのです。その後さまざまに変化していき、そういった歴史があってこその今の日本ですが、着物にまつわる考え方もまだまだ色々なのでしょう。そのため判断が難しい場合も多々ありますが、既婚者が振袖を着ることによって周りの人が違和感や不快感を覚えるようなリスクは避けたほうが無難です。ただしそれは結婚式やパーティーなどの場合に限ります。成人式に関しては既婚者であっても振袖を着ることにまったく問題ありません。素敵な振袖を着て、ご家族、ご友人との時間を大いに楽しんでください。
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